イタリアの走る宝石で太陽を追いかけた

2022/06/09

目次

Sunrise Sunset Touring Rally 2022

略してSSTR。

日昇と同時に日本の東海岸をスタートし、日没までに西海岸、石川県にある千里浜なぎさドライブウェイドライブウェイにゴールすることを目的とした自己完結型のアドベンチャーラリーです。そのテーマを「Chasing the Sun」とし文字通り太陽を追いかけながら、各参加者が愛車を駆り自分のテーマと目標を胸に日の沈む千里浜に集います。

今年で開催10周年を迎えるSSTRは、開催当初は130名だったその参加者もついには応募者だけで1万人を超え、日本最大級のツーリングイベントにまで成長しています。その記念すべきとも言える2022年のSSTRは、オープン出走可能な平日を含む5/21(土)から5/29(日)までの9日間を開催期間として、特別大きなトラブルもなく無事催行されました。

今回はそのSSTR2022の参戦記録を綴ります。

まずはじめに

SSTRに関する全てのことをここに書いたので文量がとんでもないことになりました。想定読者ごとにどの章を読めばよいかを書いておきます。

  • 完走した感想を読みたい人
    • 参加を決めるまでの話
    • SSTR2022当日(5/28)
    • また来年
  • 初参加の参考にしたい人
    • 目標とルート設定
    • 次回以降参加を検討される方へ
  • タイムラインを追いたい人
    • 参加を決めるまでの話
    • 目標とルート設定
    • SSTR2022当日(5/28)
    • 石川観光(5/29 - 5/30)
  • ゆっくり読む時間がある人
    • 全部

参加を決めるまでの話

私がバイクに乗り始めたのは2019年の4月に最初のバイクを買ったときからですが、実は当時からSSTRの存在自体は知っていました。たった100kmにも満たない距離を連続で走ったこともない新米ライダーの私は、「興味はあるけど無事にたどり着ける気がしねえ」と思い参加を見送り、いつか遠くに一人旅できるくらいの経験値を積んでからまた参加しようと心に決めます。

結局それから3年が経って、ミラーレスカメラを使ってフォトジェニックっぽい写真を撮るだとか、乗り換えだとか、そんなに遠くないツーリングスポットに行くとか、それなりにバイク乗りっぽい経験値は積んできました。SSTRに行けるようになるまでに必要な時間と経験は実際には3年も必要なかったのかもしれませんが、その間にSSTRに参加しようと決意できなかったのは、やはり心のどこかでチャレンジすることを避けていた自分と、お世辞にもツーリング向きとは言えないようなバイクに乗っていることを一つの免罪符にしていたところがあると思っています。

休憩を挟むとはいえ、日昇から日没までバイクで走り続けるなぞ経験したこともなく、いつどこで自分やバイクにどんなトラブルが起きるか見当もつきません。それでも自分以外の参加者にとっても条件は同じだと自身を説得し、リスクを最小化しちゃんと楽しんだ上で無事に帰宅することを目標としてSSTR2022にエントリーしました。

目標とルート設定

千葉を出発地とする私のSSTRのルートは、どう小さく見積もっても片道最低600kmを超える超長距離の道のりになります。規定のルールを達成し無事に帰宅できる可能性を限りなく上げるためには、考えうるリスクを排除し、計画を事前に練ることが必須であると考えました。

事前課題

バイクの燃費がかなり悪い

2021年の7月にマフラーをFF By Frescoのレーシングエキゾーストに変更して以降、SUPERVELOCE 800(SV800)は街乗りで10-13km/L、高速で16-20km/L前後の燃費を記録し続けていました。燃料タンクは11L + リザーブ5Lの合計16Lで、航続距離はどう頑張っても300km程度です。

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この悪い燃費を考慮し、ルート上の給油ポイント間の走行距離が必ず200km未満になるようにガソリンスタンドやSA/PAをチェックポイントとして設定しました。

一つ注意する必要があるのは、出発直後の早朝の時間帯はセルフではないガソリンスタンドはそもそも営業開始前で立ち寄れない可能性がある点です。必ず給油ポイントの営業時間をチェックし、給油ポイント間の距離に余裕を持たせることが心の余裕にも繋がるかと思います。

長距離ツーリングの経験が少ない

この3年間、ツーリングのために一日に移動する最大の距離はせいぜい300km程度でした。今回SSTRで600km以上の距離を走るにあたっては、少なくとも同程度の距離を走ったあとに自分の身体やバイクのコンディションがどうなるのかを把握しておく必要があります。

ということで往復600kmの位置にある長野県のビーナスラインまでデモンストレーションを兼ねて行ってきました。

牛乳専科もうもうで食べたソフトクリームが美味しかったです。

そもそも長距離ツーリング向きのマシンじゃない

SV800はポジション的にはベースとなったスーパースポーツのF3 800とほぼ同じで、四つん這い状態で首と腰と脚に負担が掛かります。おまけにシートも硬いので上記のビーナスラインツーリングの結果として以下のような症状に見舞われましたが、いずれも対策可能で走行自体には支障がなかったので軽度のリスクという認識に留まりました。

  • 全身の筋肉痛
    • 当日は傷まないので、帰路までに1日休養+観光としてインターバルを設けることで回避
  • 尻の痛み・しびれ
    • 座面の広いシート後方に座ることで回避
  • 前腕のしびれ
    • スロットルグリップのバネが強いことが原因なので、高速走行ではクルーズコントロールを併用して回避
  • 股関節の痛み
    • ちゃんと休憩ポイントを設けてストレッチをすることで回避

高速走行の風切り音

SV800がいくらフルカウルのバイクであっても、時速100kmを超える高速走行ではヘルメットに強風が直撃します。これまで使っていたSHOEIのGT-AirⅡでは十分に風切り音が軽減できないことが分かっていたので、ドイツ SCHUBERTH(シューベルト)社のSR2を試してみることにしました。

その性能は口コミの通りで、SR2で時速100kmで走っているときの風切り音は、GT-AirⅡで時速80kmで走っているときの風切り音とほぼ同等です。これで高速走行時の爆音によって難聴になるリスクは逓減することができました。

目標

SSTRでは、完走扱いとなるために満たす必要のある条件と、達成が任意の追加ルールが複数決められています。今回が初参加ではありますが、追加ルールのうち達成の可能性が高そうなものをハイ達成目標として定めてチャレンジすることに決めました。もちろんハイ達成目標は任意なので、無理せず遂行できる範囲を逸脱した時点で必須条件のみの達成に目標をシフトする前提です。

  • 必須条件
    • スタート地点(野島崎灯台)で4:30以降にスタート登録
    • 合計15ポイント以上獲得
    • 指定道の駅1ヶ所立ち寄り
    • 19:00までに千里浜なぎさドライブウェイでゴール登録
  • ハイ達成目標
    • 指定道の駅5ヶ所以上立ち寄り
  • 独自目標
    • 合計25ポイント以上獲得

ルート設定

SSTRの醍醐味の一つは道の駅巡りをすることにありますが、私の場合バイクの燃費の問題もあれば下道を多用することによるスケジュールのズレのリスクもあるため、今回は高速道路をメインとしたルート構築を意識しました。とはいえ多くの指定道の駅は一度高速を降りないと立ち寄れないため、千葉と石川を結ぶ複数の高速道路のルート上に点在する指定道の駅の組み合わせで最も所要時間と混雑による変動時間の少なそうなルートを軸に選ぶことにします。

02 route

指定道の駅を5ヶ所チェックするだけで必須条件の15ポイントを達成することは可能なので、それ以外のSA/PAは休憩・給油がてら寄った際にチェックインすることでなるべく多くのポイントを獲得する方針にしました。

SSTR2022当日(5/28)

02:00 スタート地点(野島崎灯台)へ

4時にスタート地点の野島崎灯台に到着するには、自宅を2時に出る必要があります。人生初の超異常早起きの後、痛む首をさすりながら私のSSTRは始まりました。

04:30 出発 「雨が降るなんて聞いてなかった」

出走日だった5/28(土)の天気予報は関東・北陸ともに終日晴れでした。

だというのに、ちょうど富津を過ぎたあたりで突然のスコールのような雨に見舞われ、ウェアもバイクもリュックも全部ビッチャビチャになって早速先行きが不安になります。

野島崎灯台では、私以外にも同じくそこをスタート地点とする他の参加者が何人か日の出を待機しています。別に日の出の瞬間にスタートダッシュを決めるわけでもないのに、マラソン大会のような緊張を感じつつSSTRシステムのスタート登録とバイクのセルスイッチを押す瞬間を今か今かと心待ちにしていました。

05:45 道の駅 あずの里いちはら 「虫まみれのヘルメット」

最初の指定道の駅は、同千葉県の「あずの里いちはら」です。渋滞もなくトラブルもなく順調な走り出しかと思いましたが、この90km弱の道のりで信じられないほどの量の羽虫を轢き、ヘルメットもウェアもバイクも全て羽虫まみれになりました。これを見越してウェットティッシュ(お徳用)を持ってきたのが本当に正解だったと思います。

09:00 道の駅 しもにた 「圧倒的アウェイ感」

ここらへんから並走・追走するライダーが増えてきます。道の駅「しもにた」にはかなりたくさんのバイクが停車していましたが、どこを見渡してもゼッケン付きのバイクはアドベンチャーかツアラーしか見当たりません。リアシートにおにぎり1個乗るかどうか怪しいレベルの私のバイクは、他の参加者っぽい方から「えっ、これでSSTR出てんの…?」みたいな奇異の目を向けられていました。

ちなみに今回携帯していった荷物としては、総行程2泊3日のうちアウターは全て洗濯をしながら着回す前提で、リュックにカメラと下着類だけを詰めるという状態です。そもそも荷物が載らないのでこれが限界ではありますが、別に過不足もなく十分なレベルでした。

11:30 道の駅 しなの 「絶景」

04 shinano mountain

3ヶ所目、折り返し地点に当たる指定道の駅は長野県の道の駅「しなの」です。幸い天気にも恵まれ、正面には黒姫山、妙高山、飯縄山の大絶景が広がっていました。バイクを駐車してSSTRシステムの操作とマップの確認をしながら、観光客の方から「バイクの写真撮ってもいいですか?」と聞かれて応対したり他のライダーと話をしたり。どうやら関東や東海のあたりから出発した指定道の駅目当ての参加者は、しなの以降は同じようなルートを辿っていた方が多かったみたいです。皆同じく道の駅「あらい」と「たいら」に向かおうと思っているとのことでした。

ここまで休憩を挟みつつ400km超を移動してきましたが、ちょうどいい時間なので中のお食事処「天望」で霧下そばを食べることに。直売所で農産物やお土産など色々な商品が売られていましたが、あいにくバイクの積載が終わっているので諦めて続きの旅路を行きます。

12:40 道の駅 あらい 「難解な出入り口」

道の駅「あらい」は、しなのから20分ほどで移動可能な距離にある道の駅です。

私はスマートICに隣接している道の駅というものに初めて立ち寄ったのですが、IC内の分岐路が完全な初見殺しになっています。いや実際はそうではないのかもしれないですが私は迷いました。

道の駅あらい アクセス から引用

https://www.eki-arai.com/img/access-map02.jpg

図ではそこまで複雑になっていないですが、実際に現場に行くとゲートやら矢印やらが複数あってメッチャ混乱します。もし訪れる機会があれば、後続が詰まっていても焦らずに正しい道を見分けられるようお気をつけください。

14:10 有磯海SA 「右手に見える日本海」

あらいを発ってから、富山県・石川県に向かうべく北陸自動車道に突入します。走行中にふと右を見ると、ギラギラの太陽を受けて光る日本海が一面に広がっていました。ヘルメットのエアベントを通して潮の香りが漂い、横殴りの潮風が私とバイクをグラグラに揺さぶります。

「潮風ってこんな激しいもんなのか?」

そう思って給油ついでに寄った有磯海SAでSSTRシステムにログインしようとすると、「重要なお知らせ」のタイトルとともに「本日5月28日(土)高潮と海からの風の影響により本日の千里浜なぎさドライブウェイは一部区間を除き通行止めとなっております。」というアナウンスが掲載されていました。

千里浜なぎさドライブウェイへの進入ポイントは変更になりますが、ルート設定にそこまで大きな影響はないので予定通り最後の指定道の駅に向かうことにします。空撮写真を使ったルート案内やアナウンスなど臨機応変に対応していただいた運営の方々には本当に頭が上がりません。

15:30 道の駅 たいら 「ハイパー眠気とワインディング」

出発から10時間以上が経過し総走行距離が600kmを超えたころ、普通に眠くなってきました。ハードミントのタブレットやカフェインでも消えないタイプのガチの睡魔です。有磯海SAを出発し砺波ICで高速を降りて眠気と格闘しながら道の駅「たいら」へ向けて進んでいくと、庄川のあたりで峠道のようなワインディングロードが現れました。

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道路もなんか湿ってるし気を抜いたらヤバいと直感し、一気に眠気も吹っ飛びました。しかもこのワインディングが結構長く、恐らく20kmくらいはあります。旅路も終盤に差し掛かってここに突入するとなったときに、私と同じ思いをした方は他にもきっといらっしゃるかもしれません。それでも、こういったぐねぐね道こそスポーツバイクであるところのSV800の本領を発揮できる道であり、20kmの道をあっという間に駆け抜けて最後の指定道の駅に無事到着できました。

これでハイ達成目標の「指定道の駅5ヶ所以上立ち寄り」も無事達成したことになります。

あとは千里浜へ向かうだけ。

17:20 千里浜なぎさドライブウェイ 「日没」

カーナビの到着予定時刻だと19:00ギリギリだったものの、実際に走ってみると2時間弱近く巻きでゴールしたことになります。よほどカーナビの到着予定時刻が悲観的な表示だったのでしょうか。アナウンスがあったとおり一部進入不可となっていましたが、一日中天気に恵まれたこのツーリングは綺麗な夕日と砂浜をバックに全目標達成という形でゴールテープを切ることができました。

千里浜なぎさドライブウェイの砂はちゃんと踏み固められ、バイクでも足を取られることなく走行ができました。しかし事前情報で「フロントブレーキをかけると一瞬でスリップダウンする」という話を聞いていた私は、他のライダーや出迎えで駆けつけてくださった羽咋市の方々からの「おかえり」の声に耳を傾け手を振りつつ、ひたすらコケないように必死だったと思います。そこらへんの記憶があまり無いので。

いずれにせよ、無事にゴールできたことを心から喜びました。どこかしらトラブルが起きるかもと思っていたSV800も、途中いきなり一時的にクルーズコントロールが使えなくなったこと以外は何も問題なく走り続けてくれて何よりでした。

リザルト

01 badge

追加ルールを達成すると、こんな感じで特別デザインの完走記録証を受領できます。

指定道の駅以外にもSAやPAに随時立ち寄っていた分もあって、合計ポイントも26ポイントを超えていました。初参加でこれだけの成果を残せたのであれば充分だったと思います。

ゴール後の受難

いくら対策をしたとはいえ、やはり大変なものは大変です。走行中はアドレナリンによって抑制されていた疲労や身体の痛みも、ホテルのベッドに突っ込んだ瞬間全てが一気に襲ってきて私は泥のように眠りました。

今思えば2泊3日の行程にしたのは本当に正解だったと思います。この状態の身体に鞭打って復路600kmを走るとなったときに、果たしてちゃんと帰宅できるのか見当もつきません。

この後は日焼けしそうな太陽が昇る中、金沢市内の観光を敢行することになります。

石川観光(5/29 - 5/30)

近江市場

金沢に行ったら行くべき場所、その1。たくさんの魚介類やお土産を売る店や、獲れたての海鮮料理を振る舞う飲食店が立ち並びます。

兼六園

金沢に行ったら行くべき場所、その2。とんでもない広さの日本庭園です。時期が時期なので一面緑色ではありましたが、風情を感じながらぷらぷらと散歩をしました。

ライコランド金沢店

今回のSSTRにはelfのEVOLUZIONE03を履いて行ったのですが、ゴール付近でシフトガードが破損して剥がれ落ちたため新調することにしました。新装備はTAICHIのDRYMASTERです。

JR金沢駅

夕方になり、お土産漁りついでに夜ご飯を食べに金沢駅へ。せっかくなので能登牛を食べられるお店でサーロインステーキを食べてご満悦の私です。メインのお土産は昼間に近江市場で購入済みだったので、金沢駅では菓子類のようなお土産を目当てに歩き回りました。

そこで見つけたのがこのお店です。

菓匠 高木屋 紙ふうせん

最中種(もなかの皮)に琥珀糖のようなものを入れた珍しいお菓子です。物珍しさとパッケージのコンパクトさに惹かれて購入したのですが、結局誰に渡すこともなく自分で全部食べました。

通販でも購入可能なので、ご興味のある方はぜひ購入を検討してみてください。かなりオススメです。

ひがし茶屋街

金沢に行ったら行くべき場所、その3。専ら写真を撮るためだけに行ったようなものですが、早朝や深夜であれば車両の乗り入れは可能なのでササッと行ってササッと写真を撮るのが良いかと思います。乗り入れといってもバイクはアイドリングだけでもうるさい乗り物なので押して歩くのが一番です。

無論車検非対応マフラーは控えましょう。人が住んでいます。

次回以降参加を検討される方へ

今回初めてSSTRに参加するにあたって、色々な方のブログや動画を参考にさせていただきました。それを踏まえ実際に参加した経験を通して、来年以降の自分自身への備忘とこれから初参加を検討されるライダーの方の参考になればと思い、メモとしてまとめておこうと思います。

出走前に整理しておくとよいこと

ルート設定

これは必ずやりましょう。事前に立ち寄る道の駅やSA/PAは全てマークして、事前にカーナビなどにルートとして登録しておくことをオススメします。

タイムチャートとコンティンジェンシープランの設定

SSTRの運営からも推奨されていますが、各区間の所要時間を見積もった上で「時刻」「場所」「総走行距離」「区間距離」「やること」をある程度リストアップしておくと良いです。私の場合はNotionを使って管理しました。

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各項目をマイルストーンとしておくことで、予定時間に対して前倒しで進んでいれば余裕を持って散策や休憩に時間を充てることができますし、逆にビハインドになっているときはルートを一部変更して時間に間に合うように調整することも容易になります。

ベストなのは予定のルート通り余裕を持ってゴールすることではありますが、万が一に備えてコンチプランとして複数のルートやチェックポイントをメモしておくと安心して進行できるかと思います。

自分とバイクのケーパビリティの把握

要は今の実力を知るということなのですが、連続して何時間・何kmまでなら苦痛なく走行できるのか、気候や体調の変化にどう対応するのか、自分のバイクで発生しやすいトラブルやその対応はどうするのか、燃費はどれくらいなのか、などなど。これらを事前に把握しておくことはリスクの事前排除にも繋がります。

チェックポイントでやることの整理

例え焦りが禁物だということが分かっていても、「日没までにゴールしなければならない」という制約は少なからず焦りをもたらします。そうなったときに道の駅のチェックポイントを忘れたり、スタンプを押し忘れたりしてしまっては元も子もないので、道の駅やSA/PAに立ち寄ったときに毎回やることを事前に整理しておくことをオススメします。

SSTRシステムの記録はもちろんのこと、Reliveのようなロガーアプリを使っていれば写真を撮る必要がありますし、チェックインアプリやSNSに記録を残す方もいるかと思います。後から見返して「あれ、あのチェックポイントって立ち寄ってないんだっけ?」となってしまわないようにしましょう。

宿と駐車場の確保

SSTRは、日本全国から石川県にライダーが集まるイベントです。当然開催日付近の宿泊施設は羽咋市に限らず予約が取りにくくなりますし、バイクを駐めるスペースに至っては争奪戦の様相を呈します。今回金沢駅前のホテルに宿泊した私は、大型バイクを駐車可能なスペースを探して駅前をぐるぐる回る羽目になりました。

可能であれば宿泊施設の駐車場・駐輪場を利用するのが一番ですが、それが難しい場合は頑張って探すしかありません。

持っていくとよいもの

サイドスタンド用の下駄

ゴールの千里浜なぎさドライブウェイはバイクでの乗り入れは可能ですが、砂浜にバイクを停車して写真を撮ろうとする場合は注意が必要です。

というのも、地面はただの砂浜なので、たとえどれだけ軽量なバイクであってもサイドスタンド一本で立てるとスタンドがめり込んで倒れます。特にアドベンチャーやツアラーのような重量のあるバイクは100%倒れます。ゴールして記念写真を撮ろうとした瞬間にバイクを傷物にするのはあまりにも悲しいので、スタンドの接地面積を増やすためのエクステンションや木片、プレートのようなものを準備しておくことをオススメします。

レインウェア

SSTRは参加登録後のキャンセルで返金を受けられないので、基本的に雨が降っていても出走を強行することになります。また、たとえ出発時点で晴れていても経由地や時間帯によっては雨が降る可能性はゼロではありません。普段なら少しくらい濡れてもへっちゃらと思ってツーリングをしている方も、レインウェアを携帯し万が一に備えておくとよいかと思います。

ウェットティッシュ or クリーナー

私が道の駅「あずの里いちはら」でそうなったように、ヘルメットやバイクが虫まみれになるのは回避できません。帰宅してから一気に洗車をするのでもよいですが、潰れた虫の体液や死骸は早めに落として綺麗にしておけば旅路のストレスも軽減できるかもしれません。

※ 虫の死骸を無理やり落とそうと強く擦ると、塗面やクリアに傷が入ることがあるのでご注意ください。

保険証・ヘルスケアアプリ

最悪の事態を想定することも大切です。

保険証は、病院に行く必要のある怪我や病気になってしまった場合に必要になります。

ヘルスケアアプリは、自分自身では応答が不可能なほど重篤な状態になってしまった場合に緊急連絡先への連絡や輸血、その他様々な判断を医療スタッフや救護者が行う手助けになります。

怪我も病気もせず無事に帰るのが一番ですが、事故も病気も自分だけが気をつけていれば完全に回避できるわけではない以上準備は万全であるべきだと思います。

当日心がけるとよいこと

安全運転

SSTRの目的はタイムアタックやポイント勝負のような競技性の追求ではなく、あくまで条件を達成しつつゴールをすることにあります。超長距離を走行するからといってオーバースピード、一時停止無視、すり抜けのような行動が許されるわけでもありませんし、それらはそもそも大前提です。道路交通法はもちろんのこと、マナーやその他の法規も必ず遵守しましょう。

体調管理

眠気を含め、走行中に体調が悪化すると集中力も低下し最悪事故を誘発します。チェックポイントごとに身体やバイクのコンディションを確認し、次のチェックポイントまで安全に走行できることを都度確認するとよいでしょう。そしてこれは私自身への戒めでもあります。

楽しむこと

SSTRはエントリーをした瞬間から始まり、無事にゴールし最終的に帰宅してようやく終わりを迎えます。ルート設計をしている瞬間もそうですし、千里浜に着いたあとの帰路も含めて全部SSTRです。

長距離ツーリングである以上気をつけるべきことはたくさんありますが、他のライダーとの交流、チェックポイントの散策、石川観光など、全てを楽しみ良い思い出として残すことが何より大切です。

また来年

まさか自分がバイクと身一つでここまで辿り着くとは、少し前の私は多分考えてもみなかったことです。3年前に会社の先輩に触発されて大型二輪免許を取得して始めたバイク乗りとしての生活も、今回のSSTRの参加を通して一つのマイルストーンを踏めたような気がしています。

バイク乗りと一口に言っても色々なスタイルがあって、SSTRのようにルールと時間の制約があるツーリングイベントは「バイクツーリングの良さである自由が奪われている気がしてイヤだ」という意見も確かにその通りです。そうであっても、その制約の中でいかに自分の知恵とスキルを発揮し無事に千里浜に辿り着けるかどうかがこのイベントの醍醐味であり、ゴールできたときの達成感と感動を大きく助長する要素になっていると私は考えます。誤解を恐れずに言えば、SSTRに参加するまではただいたずらにバイクを走らせることだけを目的としていた節があって、あまり遠くに出かけることもしなければミーティングのようなイベントにもほとんど参加することはありませんでした。別にそういうスタイルを否定するわけではなく、今回の旅を通してバイク旅に対する視座が高くなったというのが表現としては正しいかもしれません。

手を振ってヤエーをするとか、道の駅で他のライダーに声を掛けるとかも、距離を問わず普段からツーリングの度にやっていることです。SSTRでもたくさんの人と手を振り合い、たくさんの人に声を掛けたり掛けられたりしました。少しだけ普段のツーリングのそれとは違うなと思ったのは、そうして交流した人たちは皆同じ目的で同じ目的地に向かってひたすら走っているという一体感があったからなのか、まるで長距離マラソンで互いを励まし合っているかのような気持ちで一つ一つ噛み締めていたということ。千里浜へ向かう道で会った参加者とは「ゴールまでお互い頑張ろう」と思いながら手を振ったし、帰り道で偶然並走した参加者とは「お疲れ様、また来年!」と思いながら手を振りました。SSTRを通したライダーとのコミュニケーションには、ジェスチャーや言葉を超えたエモが含まれています。長距離マラソンとかやったことないですけど。

SSTR自体、言ってしまえば「ただ道の駅行脚して石川に行くだけ」というものですが、参加してみないと分からない感動があることは絶対に保証します。ある目的地に向かってバイクで旅をすることに対して、もっとチャレンジングな別の意味を付け加えて大きな感動を得るということこそがSSTRの真髄です。

ここまで読んでSSTRに興味を持ってくださった方、是非また来年夕暮れの千里浜で会いましょう。


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