MV Agustaは万人受けはしないけど良いバイクだということについて

2021/12/23

前置き

社会人になった年の11月に大型自動二輪免許を取得してから3年、最初のバイクを買ってから2年半ほどになります。

公道での運転操作にもいい加減慣れたし、それなりに遠い場所へのツーリングも頻繁にするようになりました。最初の頃はショップに頼んでいたドライブチェーンの洗浄と注油作業も自分でやるようになって、ようやく「バイク自分でメンテしてます」感が出てきたような気がします。

これまでに自分がバイクに乗っていて感じた良いこと・悪いことや維持する上での課題・注意点などを、メーカーに関わらず他の大型バイクオーナーから聞いた話との比較なども交えてまとめようと、ふと思い立ちました。

自分はこの2年半でMV Agustaのバイクを2台乗り継いできましたが、他のメーカーのバイクは所有したことがありませんでした。つまりMV Agustaしか乗ったことがありません。バイアスが強くなって良し悪しのコントラストが目立つかもしれないですが、そういう観点でしか得られない知見もあるとは思うので構わず書きます。

ツッコミは大歓迎です。

MV Agustaとは

イタリアにあるオートバイメーカーです。

創業は第二次世界大戦前。売却・買収・倒産を繰り返すという数奇な歴史を経て、現在は798cc3気筒や998cc4気筒のエンジンを搭載した大型スポーツバイクを中心に販売しています。

  • 798cc3気筒
    • ミドルクラススーパースポーツ F3
    • ネオクラシックスポーツ SUPERVELOCE
    • ストリートファイター BRUTALE 800
    • ドラッグレーサー DRAGSTER
    • アドベンチャーツアラー TURISMO VELOCE
  • 998cc4気筒
    • ハイパーネイキッド BRUTALE 1000
    • フラッグシップネイキッド RUSH
  • LUCKY EXPLORER(仮)
    • エンデューロアドベンチャー/554cc2気筒 LUCKY EXPLORER 5.5
    • エンデューロアドベンチャー/931cc3気筒 LUCKY EXPLORER 9.5

mv

https://www.mv-agusta.jp/models/

現在はアメリカンやモタード、スクーターのようなタイプの車種はラインナップされていません。それどころか、中型免許で乗れるバイクがありません。

DUCATIほどポピュラーなメーカーではないにしろ、最近は若者向けの車種やカラーリングも拡充し注目されつつあるような気がしています。エントリーモデルも200万円以下で購入可能で、「目が飛び出るほど高い」といったこともありません。

昔はエンジンの開発にフェラーリのエンジニアが携わっていたとか、走る宝石とか、走らない宝石とか、エンジン音が軽トラックと一緒とか、色々言われているMV Agustaです。それでも現行の排ガス規制であるEURO5への対応を始めとして、電子制御周りが洗練されていったり、エンジンの官能性をそのままに乗りやすさを向上させていったりと、エキゾチックなバイクとして正統な進化を遂げてきた、らしいです。

想定読者と注意事項

この記事は評論家によるインプレッションでもなければ、長年バイクに乗っているような人間によるレビュー記事でもありません。感想には主観がたくさん入りますし、客観的な事実だと思って書いたことも見落としや一部事実と異なる点があるかもしれません。(もちろんそれらの点についてはご指摘いただけると大変ありがたいです)

この前提で下記のような方向けに焦点を当てて綴っていこうと思いますので、上記を踏まえた上で読んでいただけると幸いです。

  • MV Agustaのバイクを買おうか迷っている人。
  • MV Agustaのバイクを買いたいけど、実際に所持してみてどうなのか気になる人。

遍歴と気付き

MV Agustaに乗ろうと思った経緯

最初はDUCATIを買おうと思っていた

大型二輪免許を取得したての頃、本当はDUCATI Diavel 1260を買おうと思っていました。思っていたというか、2019年6月に発売される予定だった当時新型のDiavel 1260を前金ありの予約までしていました。

Diavel 1260含めて他にもいろいろな車種を検討していて、予約をしつつも試乗をしたりショールームにお邪魔したりとバイク探しをする毎日でした。

MV Agustaと出会ったのは、2019年3月に開催された 第46回 モーターサイクルショー です。 当時はメジャーなバイクメーカー以外のことなんて何も知らなくて、MV Agustaのブースに行ったときに「何だこのヘンテコなバイクは…」「え、これで250万…?」みたいなことを思った記憶があります。

モーターサイクルショーの出展ブースの中には当然DUCATIもあって、Diavel 1260の展示車両に跨って「これが俺の愛車になるのか」とワクワクするなどしていました。

DUCATIをレンタルして分かったこと

当時在庫車がなかったDiavel 1260は試乗ができませんでした。モーターサイクルショーでエンジンのかからないモックアップに跨るのが精一杯です。そこで、ほぼ同じエンジンを搭載したクルーザータイプのDUCATI XDiavelをレンタルすることで、具体的なバイクのイメージを固めることにしました。

ここがターニングポイントです。

ツーリングで半日ほどXDiavelに乗ってみた感想としては、「なんか違うな」。車重はちょっと気になりましたが別に全体的に不満があるわけでもなく、すごく良いバイクだったことを覚えています。カタログスペックの数字がどのように自分の五感に影響を与えるのかは知る由もないものの、教習車として乗っていたHONDA NC750Lとは比較にならないような圧倒的なポテンシャルを秘めていたバイクだったことは確かです。

当時、いろいろなバイクメーカーのカタログやインプレッションを眺めては「このバイクすげえ、欲しい」なんてことを何度も思っていました。Diavel 1260もその流れで「超欲しい!」と思って予約したバイクだったのだと思います。それが、XDiavelに試乗してみて「なんか違うな」という感想を得ることで、改めて理想と現実のギャップを実感することになったわけです。

初めてのバイクを選ぶにあたって、知り合いやベテランライダーの方から「とりあえずいろいろ試乗してみて探すといいよ」という言葉をいただいていました。その言葉の意味を身を持って知った形になります。

Diavel 1260の予約はキャンセルしました。

試乗と契約

じゃあ何を買おうかという話です。

いろいろなバイクをレンタル・試乗しましたが、どれもいまいちピンと来ませんでした。「とりあえずレンタルバイクでお茶を濁すか〜」とか思いながらiPhoneのカメラロールをぐるぐるしていると、ふとモーターサイクルショーで撮ったMV Agustaのブースの写真が目に留まります。

「そういえばノーマークだったな」と思ってGooBikeで適当に何車種か見積もりを取り、怖いもの見たさで試乗に行ってみることにしました。

試乗をしたのは当時新型だったDRAGSTER 800 RR (MY2018)です。3気筒のバイクとしてYAMAHA MT-09を一度レンタルして乗ったことはありましたが、それとは似ても似つかないようなバイクでした。

イタリア語で「野蛮・乱暴」というだけあって、まだ初心者バイク乗りだった自分にとっては刺激が強すぎました。同時に、このバイクならずっと飽きずに乗り続けられそうという感覚も得ます。

軽い。速い。楽しい。音が良い。

カタログスペックだけ見れば他のスポーツバイクとそんなに代わり映えしないような数字が並んでいましたが、それでもこのバイクは直接自分の感性に訴えかけてくるような何かを持っていました。

試乗から戻ってハンコを押しました。

1台目: BRUTALE DRAGSTER 800 RR (MY2017 EURO4)

ds800

購入日 2019年4月
売却日 2020年12月
購入価格 200万円
総走行距離 500km → 8000km
パーツ バックステップ(CNC Racing)
エンジンスライダー
HIDヘッドライト

DRAGSTER 800 RRは2018年にフルモデルチェンジ(FMC)をしており、ボディの各所形状やカラーリングなどが変更になっています。FMC後のモデルのカラーリングが個人的に好みではなかったので、あえてFMC前のモデルの新古車を選びました。

維持費

定常的なランニングコストは、普通のミドルクラス〜リッタークラスの大型バイクを維持するために必要な費用と大して変わりません。燃費もハイオクで13〜16km/L前後なので、特別ガソリン食い虫だというわけでもないです。

問題は点検とか車検とかオイル類の交換とか修理費とか、そういうやつです。

幸いなことに致命的な事故や故障などもなかったので、目が飛び出るような見積書をもらったことはありませんでした。ですが車検にしろ修理にしろ、数十万円単位のお金をホイと払えるだけの余裕は持っておくに越したことはないと思います。ここらへんは上手くやりくりすると節約できる部分ではあるので、やり方次第です。

ちなみに車両のローン、保険、ガレージ代などを含めた維持費は毎月8万円程度でした。

故障・不具合

MV Agustaのバイクは個体差が激しいとか、そもそも中古のイタリア車自体がどうとか、いろいろあります。発生した問題の数だけ見ると、この車体もどちらかというとアタリとは言えない個体でした。

  • エンジン・電子制御まわり
    • Lambda sensor fault: O2センサー故障
      夏場、東名高速道路を走行中にダッシュボードに表示されました。路肩に停車して確認すると何故かアイドリングの回転数が3500前後で固定されてしまっており、一度エンジンを切って再度セルを回そうとしてもセルが回ることはありませんでした。どうやらエンジンのオーバーヒートが原因らしく、30分ほどボーッとしていると無事セルが回ったのでそのままディーラーに行って入庫しました。結局根本的な原因は不明でした。
    • Exhaust valve fault: 排気バルブ故障
      季節を問わず数え切れない回数見ました。他のオーナーの方曰く、MV Agustaのバイクの持病らしいので気にしなくていいとのことらしいですが「これいきなり動かなくなったらどうすんの…?」という恐怖と常に戦いながらダッシュボードを眺めていました。結局根本的な原因は不明でした。
    • Clutch switch fault: クラッチスイッチ故障
      このバイクにはクイックシフターがついていて、クラッチレバーを握らずにシフトペグを蹴るだけでギアチェンジができます。ダッシュボードにこの表示が出たのはちょうどカーブに突入する瞬間で、突然効かなくなったクイックシフターに焦り散らかし危うくオーバースピードで対向車線に突っ込んで星になるところでした。とりあえずブレーキをかけてアクセルオフで事なきを得たのと、これからは緊急時はクラッチレバーをすぐに握れるように心がけることをこの時に誓うことになります。結局根本的な原因は不明でした。
  • 電装系まわり
    • ハーネス破損
      ウインカー、テールランプがつかなくなりました。バイクで電装系の破損というのはよく聞く故障だと思います。この場合その原因が問題で、「エンジンの振動のせいで壊れたっぽい」という話を聞いてさすがに耳を疑いました。有り余るパワーで自分を破壊しないで欲しい。無償修理でした。
  • ブレーキまわり
    • リアブレーキのエア噛み
      ブレーキペダルを踏み抜いて「ゴッ」とアンダーカウルにペダルがヒットする感触を覚えました。リアブレーキフルードのリザーブタンクは右のステップ付近にマウントされているのですが、これがエンジンに近すぎるせいで頻繁にエア噛みをしてしまうらしいです。これも他のオーナーの方曰く持病だそうで、無償修理で対応してもらいました。

これを見て、「うわ故障多いな」と思うかどうかは個人の尺度によるかと思います。初めてバイクを買った自分は多いとも少ないとも思いませんでしたが、 走行中の安全に支障が出るような致命的な故障 さえなければこの程度の故障はまだ許容範囲だと感じました。

所感

試乗で得られた「感性に訴えかけてくる何か」という直感は正しかったです。納車から売却まで、一切飽きずに楽しく乗ることができました。

乾燥重量168kgでホイールベース1380mmという250cc並のディメンションの車体には、140馬力を発揮する狂気の3気筒エンジンが収められています。3気筒エンジンは 2気筒よりもよく回る・4気筒よりもトルクが太い といった点がメリットとして挙げられることが多いですが、裏を返すと 2気筒よりもトルクが細い・4気筒よりも回らない というエンジンということになります。

YAMAHAのMT-09やDUCATIの959 Panigale、KawasakiのNinja1000あたりを乗り比べるに「たしかになあ」と思うところはありました。しかしMV Agustaの3気筒エンジンには、そのギャップを全て上書きするような暴力的なパワーと加速力があるように感じます。故障がちょくちょく起きるとか、ミラーを含めた車幅が巨大すぎて取り回しが厳しいとか、気になる点はいくつかありました。それでも、このバイクを操る楽しみはそれらの欠点を補って余りあるレベルだと感じます。

現行モデルは乗り出しで300万円ほど必要になっていますが、それだけ進化しているということでもあると思うのでいずれまた乗ってみたいと思っています。

2台目: SUPERVELOCE 800 (MY2020)

sv800 side

購入日 2020年12月
購入価格 270万円
総走行距離 5000km
パーツ 2in1マフラー(FF by Fresco)
ヘッドライトリングナット
レバープロテクター
シングルシートカウル
エンジンスライダー(CNC Racing)
フレームキャップ(CNC Racing)

購入したDRAGSTER 800 RRは、2018年の3月に登録された車体でした。なので、2021年の3月に車検が切れるということになります。もともと2021の3月で車検が切れると同時に別のバイクに乗り換える予定ではありましたが、このSUPERVELOCEはそれを待たずして試乗をした上で4ヶ月前倒しで購入しました。

RUSH 1000やBRUTALE 1000 RRも検討しましたが、さすがに100〜200万円もプラスでローンを組み直そうという気にはなれず見送りました。度胸が足りない。

維持費

DRAGSTER 800 RRと変わりません。

故障や破損の修理費が高いのも一緒です。

唯一、FF by Frescoのマフラーを装着して以降燃費が2〜3km/Lほど悪化するようになりました。ひどいときは街乗りで10km/Lくらいになります。ガソリン代がかさむのもそうですが、給油スパンが短くなるのも若干ストレスを感じるときがあります。

故障・不具合

これは個体差なのか、それとも3年の時を経て洗練されたからなのか、1年乗っても特に致命的な故障などなく乗れています。インターネットには「ブチコワーレ」というMV Agustaを揶揄するような言葉もあるらしいですが、今の所故障とはほぼ無縁といっても良いくらいです。故障が怖いなら新車を買えば良いと思います。

  • エンジン・電子制御まわり
    • 今の所発生していません。
  • 電装系まわり
    • こちらも今の所発生していません。
  • ブレーキまわり
    • リアブレーキのエア噛み
      DRAGSTER 800 RRと同じ症状でした。やはり持病のようです。

所感

SUPERVELOCEを購入した理由は2つあります。

1つは、スーパースポーツタイプのバイクに乗ってみたかったこと。カウルとスクリーンによって走行風の直撃をある程度回避できることもありますし、単純にそういうアグレッシブなバイクに憧れていたというのもあります。

もう1つは、キャンペーン期間中でマフラーが無償プレゼントしてもらえるということ。12月に前倒しで購入したのはこれが理由です。

動力性能についてはDRAGSTER 800 RRや試乗を通して確認済みだし、電子制御も言わずもがな進化しています。DRAGSTER 800 RRに2年弱乗って得た印象をもとに、理想とのギャップや課題を確認して次のステップを選択したのは正解だったと言えます。

SUPERVELOCEはF3を街乗りっぽい味付けにしたとか、同じ3気筒エンジンでも他のモデルとは別の性質を持っているなどと評されることが多いです。しかしド素人の自分にはそれほど違いは感じられず、DRAGSTER 800 RRのときと同じように「ひたすらコンパクトで軽い車体にイカれたエンジンが積んである狂気のマシン」という印象は変わらずでした。

未だに飽きずに乗り続けていられます。

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MV AgustaのかつてのGPマシンを彷彿とさせる1-2本出しのマフラーもいい音を鳴らします。車検対応とは俄には信じがたいです。

乗り換えて気づいた、良かった・改善されたポイント

トラブルの発生数

DRAGSTER 800 RRでそれなりの回数の故障や不具合が発生していたので、SUPERVELOCEを買うにあたっても同じようなことになることは覚悟していました。

実際にはそれを大幅に下回っていたので、イタリア車は壊れるというジンクスが払拭されたのか、はたまたただの個体差なのか、いずれにせよ良かったと思います。

クイックシフターの精度

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https://www.mv-agusta.jp/models-2/dragster-rr-my2017/

個人的に一番進化したなと感じたのはここでした。

DRAGSTER 800 RRのクイックシフターは、特に1〜3速前後でのシフトダウンのときに身体がつんのめるレベルのショックが発生することがありました。ディーラーからは「そういうものなので仕方がない」とは説明を受けていましたが、SUPERVELOCEに乗り換えてみて全てのギアで上下ともにスムーズに操作できるクイックシフターに感動を覚えたことを今でも思い出します。

クイックシフターはメーカーによって精度や仕組みも異なるものが多いですが、現在MV Agustaのバイクが装備するクイックシフターはかなり完成度が高いように感じました。

高速走行の快適性

完全なネイキッドバイクだったDRAGSTER 800 RRと比べて、SUPERVELOCEは一応フルカウルに分類されるバイクになっています。当然ではありますが、高速道路で身を伏せながら走ったときの風切り音の少なさと、受ける風による疲れはDRAGSTER 800 RRの頃から圧倒的に改善されていました。

車幅起因のストレスからの解放

DRAGSTER 800 RRはドラッグレーサーというだけあって、普通のネイキッドバイクよりも更にハンドルバーが広げられています。それに加えて外側に張り出す形のバーエンドミラーが装備されているので、ミラーを広げたときの車幅はなんと110cmを超えます。

これだけ幅があると狭い道を通ったり駐車場で取り回すをするときには尋常じゃなく気を遣いますし、追い越し・追い抜きでもミラーをぶっ飛ばしやしないかとヒヤヒヤしながら走ることになります。

スーパースポーツというだけあってSUPERVELOCEのハンドルバーはそれなりに絞られているので、こういった悩みからは完全に解放されることになりました。

ダッシュボードの機能性

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https://www.mv-agusta.jp/models/dragster-rosso-my2021/

新しいBRUTALE 1000シリーズやRUSHと同様に、SUPERVELOCEにもフルカラーTFT液晶のダッシュボードが搭載されています。これまでの単色液晶モニターから一新され、デジタル表示のタコメーターが表示されるようになって一気にハイテク感が増しました。

iPhoneとペアリングすることによって、ダッシュボードからミュージックプレイヤーのコントロールや音声着信の待ち受けができます。最初の頃は別にいらないかなあと思っていた機能も、使ってみると意外と便利で手放せないものです。

乗り換えて改めて思った、気になるポイント

車両価格が高い

前述の通り、MV Agustaの現行モデルは200万円あれば新車でエントリーモデルを購入できます。

しかし、あくまでエントリーモデル。よりスポーティなモデルや限定モデルを買おうとすると車両価格だけでも250〜600万円、乗り出しとなると最低でも300万円ほど掛かるという覚悟が必要になります。

この300万円、果たして安いのでしょうか?それとも高いのでしょうか?

「このバイクにはそれだけの価値がある」と思ってDRAGSTER 800 RRやSUPERVELOCEを買ったものの、その数字を改めて見直してみると、実は他のメーカーのバイクならフラッグシップモデルをオプションもりもりで買えるレベルだということにも気が付きました。それでいてMV Agustaのバイクは最上級のコンポーネントで構成されているというわけでもなく、マスターシリンダーはニッシンだったり、サスペンションはザックス/マルゾッキだったり、カウル類にはFRPや普通の樹脂が多用されていたりします。

そういう事実だけを並べてみると、他のバイクと比べるとやはり少し割高のように感じてしまうのも一理あると思います。

パーツも高いし納期も長い

カスタムパーツに関してはそもそも供給メーカーがほとんどないというのもありますし、純正パーツについてもイタリアから輸入する前提になるのである程度の出費は覚悟する必要があります。

SUPERVELOCEの購入時に無料で付属したマフラーは定価だと35万円、それ以外のマフラーも25〜40万円前後の価格が設定されています。レバー類やバックステップ、スプロケット、クラッチカバー、ホイールのようなアイテムもそれぞれだいたい10〜30万円かかります。一番驚愕だったのは チタン製スプロケットナットx5 33,000円 でした。ナットで3万円…?

これらはカスタムパーツの話ですが、純正パーツにしても国産メーカーのバイクと比較して数倍の費用は必要になります。在庫に関してもパーツが日本にあることのほうが稀なので、パーツを交換するのにも数ヶ月単位で時間がかかることも多々ありました。

ところどころ作りが雑

洗車やコーティングをするために作業灯で車体を照らしながらウエスで磨いていると、細かい部分が気になってきます。例えば、ケーブル類を固定するタイラップの留め方が雑だったり、ステッカーがズレていたり、ネジロック剤が飛び出していたり…。

これがハンドビルドの良さといえば確かにそうですが、工業製品として見てみると気になる人は気になってしまうかもしれません。

燃料計がない

ダッシュボードはフルカラー液晶になりました。しかし、変わらず燃料計は追加されませんでした。

不便です…。

同じダッシュボードを搭載するBRUTALE 1000シリーズには搭載されています。3気筒シリーズにもいずれ搭載されることを密かに願っています。

正直MV Agustaはどうなのか

間違いなく乗っていて楽しい

この記事を通して、確実に伝えたかったのはこのポイントです。

乗ったことがない人は是非試乗に行ってみてください。バイクにもEV化の波が近づきつつある昨今、これだけの官能的なエンジンを持ったバイクは本当に一見の価値があると個人的には思います。

思いの外普通に買えるし乗れる

先にも述べましたが、高いとはいえ手が届かないような値段のバイクではないです。それこそbimotaやVYRUSのようなメーカーと比べれば、遥かに現実的な価格設定で安心して所有することのできるバイクだと言えます。

輸入車特有の気難しさはアリ

これは輸入車である限りついて回る問題ですし、MV Agusta以外のメーカーにも同様に言えることです。身構えるほどではありませんが、心に留めておくとよいことだと思います。

総合的に見て良いバイク

結局どうなのかと言うと、「欠点はありつつも、その欠点と値段を補うだけの長所を持ち合わせたバイク」というのが個人的な評価です。

迷う理由が値段なら買え、買う理由が金額ならやめとけ」という言葉があり、確かになあと思う一方でこの言葉は、RUSH 1000の500万円という値札を目の前にして日和ってしまった1年前の自分に深々と突き刺さることになるのでした。

おわり

sv800


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